きっかけは図書館で借りてきた山雑誌“山と渓谷”の記事(読者からのお便り)だったと思う。薬師沢小屋で働いていた女性が書いた本が面白くない訳がない。
去年、念願の雲ノ平を含む黒部源流一帯をテントで縦走する際、薬師沢小屋に立ち寄った思い出もありとても興味が湧いた。
ネットで検索してみると区内の図書館にありすぐさま予約。山雑誌も小説もとりあえず図書館にあるものはレンタルで済ませ、特に気に入ったものだけ後から購入することが多い。
まず、表紙の優しいイラストにほっこりする。絵を描くことよりも山を登っているほうが楽しいと気づき、美大の教授より「それでいいんですよ!」と言われたエピソードも微笑ましい。
薬師沢小屋は黒部源流の谷沿いに建つ小屋で、エメラルドグリーンの沢がとても印象的だった。何といっても、通りかかった登山者にも無料で提供される沢の水が冷たくて美味しかったこと!
登山者としてたった一日訪れるのと、小屋番として数ヶ月暮らすのは大違い。頭ではわかってはいたものの、大変なご苦労の上に私たちの快適な登山が成り立っていることを改めて感じさせられた。
自然の脅威にさらされることがある中で、宿泊者数の予想を立てながら食事や寝床を準備し、山に棲んでいる動物たちによる食物荒らし被害などにも対応しなければならない。そして、時には身勝手な登山者もいたりする。
読み進めていくと、太郎平小屋の一樹さんとは「あぁ、あのお方か!」と気づいた。山小屋には似つかわしくない風貌(いい意味で)の男性に受付でお会いしたことがあるのを思い出したのだ。
特に、熊とヤマネのコラム(まんが)がとっても面白い。被害の対策を講じつつ共存を図るためにはどうしたらいいか?先住者に対する優しい目線で描かれていて思わずニヤニヤしながら何度も読み返した。ヤマネってめちゃくちゃ可愛いんだね。いつか会えたらいいな。。。
山小屋で起こる諸問題を女性らしい柔軟さで乗り越え、オーナーさんや他スタッフさんと一緒に解決していくさまは実に逞しい。等身大で飾らないキャラの著者にとても共感する。
また黒部源流を歩きたい。そして薬師沢小屋にも泊まってみたい。そんな風に思える楽しい本をありがとうございます。(#^^#)