山を始めたばかりの時期は有名な山に目が行くもの。
槍ヶ岳、甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳などは初心者の頃に登頂済みである。
その後は生意気にも黒戸尾根に興味を抱き、こもれび山荘に後泊する形で歩いたことも。
あの頃のアグレッシブな行動には自分でも驚いてしまう。
【ヤマレコ・念願の黒戸尾根から甲斐駒。。台風を避け北沢峠へ下りて大正解!(後泊) 2014年10月04日(土) ~ 2014年10月05日(日)】
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昔は登山バスの選択肢が多かったおかげで北沢峠からスタートできたけれど、時代が変わってすっかりアクセスが難しくなった。
そこで、11年ぶりに黒戸尾根から甲斐駒ヶ岳にテント装備でチャレンジしようなどと目論んだのだが…。
もくじ
往復のアクセス
[往路]
07:00 新宿よりあずさ1
08:53 小淵沢
09:00 小淵沢駅よりマウンテンタクシー(1500円)
09:16 尾白川渓谷駐車場
[復路]
16:05 尾白の湯よりマウンテンタクシー(1800円)
16:20 小淵沢駅
**入船食堂**
17:25 小淵沢よりJR中央本線
自己CT
[1日目]
09:30 尾白川渓谷駐車場
09:40 吊橋
11:22 甲斐駒ヶ岳分岐
12:00 笹ノ平分岐 12:20
12:50 二合目馬止観音
14:10 三合目口ノ摩利支天
14:16 刃渡り
14:18 おやつタイム 14:28
14:55 四合目刀利天狗
15:45 五合目小屋跡
16:28 六合目不動岩
16:50 七丈小屋 16:57
17:05 第一テン場
[2日目]
04:54 第一テン場
05:37 八合目御来迎場 05:38
06:07 九合目烏帽子岩
06:31 駒ヶ岳神社本宮 06:32
06:33 北沢峠分岐
06:36 甲斐駒ヶ岳 07:00
07:28 九合目
07:50 八合目
08:15 第二テン場
08:17 第一テン場 09:16
09:21 トイレ 09:22
09:23 七丈小屋 09:27
09:42 六合目
10:09 五合目(ランチ) 10:28
11:09 四合目
11:26 刃渡り
11:32 三合目
12:09 二合目 12:16
12:32 笹ノ平分岐
12:53 一合目
13:50 尾白川渓谷駐車場 13:58
14:22 べるが
緑のシェード*素敵な苔の森
久しぶりの小淵沢駅にワクワク。

前日にマウンテンタクシーの予約とカード決済を済ませているので、運転手さんに名前を告げるだけ。
この時間帯は単独男性お2人と私の3名。
お隣のお兄さんはいかにも甲斐駒日帰りという出で立ちだったけれど「いえ、撮影がメインなんで~」と笑っていた。
【マウンテンタクシー】

尾白川渓谷駐車場は平日なのでガラ空き。
翌日の下山時には満車だったよ。

涼しげなコバギボウシ。

無性に可愛いヘクソカズラ。

カメラ目線のツユクサ。

竹宇駒ヶ岳神社の奥へ進む。
11年前は真っ暗でこの吊橋を見つけるのに難儀したっけ。

カニコウモリはまだ蕾状態。
序盤の登山道にて、スマホが機内モードになっているかを確認しようとして手から滑って落下。
あっ!!!
液晶にフィルムを貼り更にジップロックでもカバーしていたが、打ち所が悪かったようで画面にヒビが…。
あんなところでスマホを出したことがただただ悔やまれる。
「持ち物が壊れたり失くした時って、自分の身代わりになってくれたんだと思うよ」と話していた同僚が脳裏に浮かぶ。
そういえば「恩送り」という素敵な言葉も彼女から聞いたな~。
厳密にはスマホは故障しておらず問題なく使用可能。
それでもかなりショックだけれど、彼女の言葉を思い出して気持ちを切り替えた。

キノコもしゃもしゃ。

大昔のファンタ缶、何十年ここにいるんだろ?

ヤマジノホトトギスがあちらこちらに。

「え、まだ一合目なの」
だいぶ歩いてから一合目山ノ神の道標が出てきてガックリ(笑)。
笹ノ平に着いたら休憩しようと思いながら黙々と歩き続ける。

そして笹ノ平分岐。

倒木ベンチに座って鮭はらみ、とり五目のおにぎり。
「スポーツドリンクじゃなくてどうしても緑茶が飲みたい」という身体の声に従う。

日焼け止めを塗り忘れたけど、緑のシェードに遮られ全く問題なかった。

綺麗なメタリックパープルのフンコロガシを観察。

登山道が崩落してこんな迂回路?に誘導されるも歩きにくいったらありゃしない。

色づいたオオカメノキ。
しっかしこんなに長かったっけ?
刃渡りはまだかな?

こんな素敵な苔の森もあって癒される。
やけに長く感じる道程*やっと刃渡り
歩いても歩いても先が見えないと感じていたら…。

やっとこさ刃渡り。
11年前はもっと早く出てきたような記憶があったのに、荷物が重いとこんなに違うものかな。

振り返ると眼下に下界が見える。
以前は真っ白だったからねー。

早くもエネルギー切れとなり、職場でいただいたスイーツを開封。
江戸太鼓はもっちもちで美味しかった。

いよいよ梯子の登場。
今日は平日だからか誰とも遭遇しない。
マイペースで登れることだけが救いか。

刃渡りの先に四合目刀利天狗。
まだまだ長い修験道*垂直の岩場
どんなに疲弊しようがただ黙々と歩き続けるしかない。

うあ~~やっと五合目小屋跡だ。
事前にわかっていたことだけど、この道はテン泊装備だとかなりしんどい。
何といっても11年という年月の重みを感じるわ。

パオーンになってないからこれはホツツジね。

きゃー、タカネママコナ。
さっき苔の森にもいたけど薄暗かったから撮れなくて。
八ヶ岳(本沢温泉)で見たのと同じかな?


黒戸尾根はきちんと整備されているから特に難しい箇所はないけれど…。
長い道程のあとに梯子や鎖場が連続して出てくるため、身体的な疲労と重なってそれがキツイのなんの。
水場があるからいいやと少なめに持参した水がとうとう切れてしまい。

「テン泊装備で黒戸尾根を歩くのは最初で最後だな」
「てか、当分もういいや(笑)」
つくづくそう思いながら垂直の岩場を確実にこなす。
こんな所で滑落するわけにはいかない。
ヘトヘトで辿り着いた七丈小屋*第一テン場
力を振り絞って最後の登りをクリアすると…。

ヘトヘトになりながらやっとのことで到着した七丈小屋。
あぁ懐かしい。。。
予想を上回る7時間というロングな道程を、なんとか持ちこたえた自分の体力と精神力には感謝しかない。
冷たくて美味しい水をがぶ飲みして生き返った。
空のボトルにも満タン補充しておく。
七丈小屋の一番の恩恵はこの豊富な水場でしょ。

七丈第二小屋の手前にトイレあり。
梯子を上がってテン場までもうひとがんばり。

夜間のトイレはちょっと大変そう。

第一テン場には一張のテント。
全部で三張と聞いたのであとは上に張っていると思われ。

本日の宿。
疲れているけれどまだ夕食の準備が残ってる。

家から持参した小松菜を茹でてトッピング、無印のごはんにかけるルーローハンがとても美味しかった。
もち米のほうがエネルギーが高いので赤飯おにぎりを2個使用。
温かいわかめスープを添えて。
ふー、やっと人心地ついた感じ。
今日は初使いの夏シュラフにトライできるから夜も楽しみ。
結果的にはいつの間にか寝落ちしてたけど。
ご褒美の素晴らしい朝焼け
☆翌朝☆
暗いうちに目が覚めた。
素敵な一日のスタート。
クルミとレーズンたっぷりフランスパン、甘さなしのカフェオレ2杯で朝食を済ませる。

アタックザックを持って早朝5時前にテン場を出発。
小屋泊らしきご夫婦が先行された。

素晴らしい朝焼けに感激しきり。

少々狭い第二テン場はこちら。
トイレは少々遠いけどプライベート感ある。


おっと、ここでご来光。
雲海がすごいよ。

本当に素晴らしい朝。
昨日がんばって登ったご褒美よね、これって。

あのピークの奥が甲斐駒。
既に下山してくる人もちらほら。

ひゃっほ~、八合目御来迎場。

振り返ると富士山がチラリ。

わーい、朝陽に輝くタケシマラン。

おっ、例の記念碑は健在。
登りきったところでさきほどのご夫婦がお弁当を広げている。

大岩の横をすり抜けて。

トウヤクリンドウ見っけ。
九合目烏帽子岩の下で、昨日マウンテンタクシーに同乗していたお兄さんと再会。
「あっ、昨日の…」とお互いに短い挨拶を交わして。
きっといい写真が撮れたことでしょう。

ソバナかな?

あーっ、カッコイイ黒のホシガラス。
ハイマツの実を激しく突いてた。

終盤のイチヤクソウ。

おぉぉ、素晴らしすぎて言葉が出ない。

ナナカマドの赤い実と岩峰。

11年前に私が勝手に名づけたジョーズ岩。

ぴょこんと飛び出ているところが鋸岳。

駒ヶ岳神社本宮を経て。
感慨無量の甲斐駒ヶ岳
いよいよ山頂が近づいてきた。

甲斐駒ロックオン。
北沢峠分岐を越えてビクトリーロードを進む。
一晩たっぷり寝てほぼ空身で出発したからやっぱり速いわ。

わーお。
こんな日がまた来るとは。

見ざる聞かざる言わざる。

11年ぶりに黒戸尾根から甲斐駒ヶ岳(2967m)を踏む。
う~~ん感慨無量。
この時点では山頂に私だけ。

阿弥陀岳~横岳~赤岳の黒いシルエット。
一番左は蓼科山。

穂高岳や槍など北アの山々も薄っすらと。
左奥は乗鞍岳のようだ。

お次は中央アルプスの山々。
南駒ヶ岳~空木岳~熊沢岳~三沢岳~宝剣岳~木曽駒ヶ岳。
一番右に見えるのが御嶽山。

南アの女王、仙丈ヶ岳は堂々たる風格。

尖ったピークが北岳でその奥は間ノ岳。
そして悪沢岳~荒川岳~塩見岳。
手前はアサヨ峰。

鳳凰三山と富士。
耳元にそよぐ風が心地よく至福のひととき。

金峰山方面。

反対側には東駒ヶ岳の表記。

かなり前に空木岳直下の小屋でオススメされた摩利支天。
今日も眺めるだけ。

最後にデンジャラスな鋸岳。

さきほどのご夫婦が登頂され景色を楽しんだ後、しばらくしてからシャッターをお願いした。
撮影ありがとうございます。


昨日の苦労が嘘のように晴れやかな気分。
甲斐駒ありがとう!

パッと飛び去った野鳥はイワヒバリ軍団。
私が下りるほうへと飛んでいく。

あ、じっと動かずに私を見てるイワヒバリちゃん。
「ほら、今なら撮っていいよ」と言ってくれてるような。
お姿見せてくれてありがとね。

タカネヒゴダイでいいかな。

あらーっ、あんな崖にピンクの花が。

タカネビランジ咲いてる!

キュートなコケモモ。
イスカULシュラフ*エアドライト140のご紹介
スタスタと下って。

第一テン場に帰還。

テン場からも富士山が見えるよ。

下山途中にどこかでランチをするため、お湯を沸かしてサーモスへ。

イスカの夏用ULシュラフ、エアドライト140。
薄くても充分快適に眠れた。
大柄な男性には無理っぽいけど小柄な女性ならちょうどいいサイズ。

色々迷ったけどこれにしてよかったよ。
軽くてコンパクト、無駄をそぎ落として必要最小限。

ヘキサーのULランタン電球色。
小さいけど頼りになる。

個人的には最初で最後のテン場。
万が一、また来るとしたら七丈小屋泊まりかな。
でも当分いいや(笑)。

「お世話になりました」とご挨拶。

七丈小屋にも終盤のタカネビランジ。
以前咲いていたのと同じ場所に。

今日も登山日和だね。

土曜なので登ってくる人が結構いた。
こんなところで渋滞したらやだね。


タカネママコナ可愛い~~。


五合目にてランチタイム。
普段は絶対に買わないカップ麺、今日は時間的に下界でのランチが難しいと予想しザックに入れておいたもの。
チリトマにお湯を注いでいると、テン泊の若者がやってきて少々会話。
やっぱり男性陣は足が速いね。
七丈小屋の美味しい水は何よりのご馳走。
さきほど汲んだ水をペットボトルに移し替えておいて正解、べるがで飲み尽くした。


マンモスみたい。

ベンチが充実している二合目にて小休憩。
大好きなカシューナッツ。

黙々と歩いて尾白川の吊橋。
キャンプ人口多いな。

スルーできないゲンノショウコ。
売店おじろ*バニラソフト
長かったけど無事下山。

尾白川渓谷駐車場の売店おじろに直行。
もうアイスのことで頭がいっぱい。

バニラソフト(500円)がとろ~り。
ウマー。
べるが*尾白の湯♨
お次は温泉♫

道端のボタンヅルが美しい。

ヨウシュヤマゴボウ。

こっち向いてるツリフネソウ。

8月下旬なのにタマアジサイ。

べるが→の看板に従って。

べるが入口から温泉まで徒歩7分。

尾白の湯に到着。
【べるが・尾白の湯】
https://www.verga.info/onesen-furo

北杜市外830円、北杜市内は半額。
無料ドライヤーなし(5分100円)、持ち込み可。
露天の寝湯などでまったり。
帰りのマウンテンタクシーは尾白の湯玄関前からの乗車で予約しておいた。
このオプションプランは実にありがたい。
入船食堂*親子丼
新宿行きのあずさはどの便も満席だったため、やむなく鈍行で帰ることに決めて。
そうとなったら時間的に早めの夕食としよう。

小淵沢駅前にはお洒落なカフェなどいくつかお店がある中で、迷うことなく昭和の香りが漂う入船食堂さんへ。
中途半端な時間にもかかわらずそこそこの混雑ぶり。
【北杜市観光協会・入船食堂】
https://www.hokuto-kanko.jp/spot/irifunesyokudou/

親子丼というか豚肉を使っているので他人丼になるのかな。

お店の外観だけじゃなくお料理まで昭和っぽくていいじゃない?
豚肉の親子丼、すっごく美味しかった。
旦那さんも女将さんも人情味溢れるお人柄が素晴らしい。
ごちそうさまでした!

小淵沢駅前に夏とは思えない壮観なノリウツギ。
最後に
喉元過ぎれば熱さを忘れるじゃないけれど昔の記憶が薄れてしまうのか?
小屋泊でもキツかった黒戸尾根に今度はテントでチャレンジするなんて、どれだけドМなんだよと心の中で笑ってしまった。
運動は苦手なのに不思議と持久力だけはあるんだなと再認識した次第。

それにしても昨今の遭難の多さは異常事態。
毎日のように見かける遭難事故のネットニュース。
更にスマホひとつで簡単に救助要請できるシステムにも疑問を感じる。
私も過去に山で色々なミスをしてきたし、運がよくて助かったことも多々あるけれど…。
登山者ひとりひとりの課題は尽きないが、現状では解決策があるのかどうかも正直わからない。